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暗闇で恋しましょう

第25章 救われたんだ③

いや、甘夏のことだ。そんな意図はきっとない。


それでも、それでも確かに、男の心は軽くなったのだ。



「っ………」



親に愛想を尽かされるため、始めた様々なこと。


それは“いい子ちゃん”だった男には酷く負担になっていて。


あんなんでも育ててくれた親への罪悪感。


向けられたこともない冷めた視線。言葉。


それらは、自分はダメなことをしているんだ、と思うには十分すぎる材料で。



でも、そっか。休憩、か

まあ、ダメなことはダメなんだけど……

休憩、休憩ねぇ



ふふと妙な笑いがこみ上げる。


耳につくのはチャイムの音で。



次は、確か、国語



いつもなら思わないそんなことを思いながら、教室への男は歩を進めたのだった。

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