テキストサイズ

暗闇で恋しましょう

第33章 だから、きっと、この涙は

その場に流れていた空気ががらりと変わる。


私の心臓が、ひどくうるさい。



「?お客様?大丈夫ですか?」



声掛けにハッとすれば、いつ降りたのか。


外にいるひぃちゃんと目が合う。


私も、早く降りなければ。


慌てれば慌てるほど、動いてるものから降りるのは難しいらしい。


タイミングを図りかね、なんとも奇妙な動きをしてしまう。


係員のお姉さんなんて、笑い堪えてるし。


笑ってるくらいなら是非とも助けてほしい。



「何やってんだ。ほら」



ひぃちゃんが乗る時よろしく、手を差し伸べてくれた。


それに縋るよう降りれば、同然のように手は繋いだまま。


歩き出すその横顔には、続きを言う気配は微塵もなく。


私は、横顔から、ひぃちゃんの熱っぽい視線を思い出し、止まぬ心音をもっと高鳴らせたのだった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ