
暗闇で恋しましょう
第35章 そして、これからも
目を開けば、そこは知らない天井。
ひぃちゃんの家のものでもないし、高級ホテルのものでもない。
「杏!!」
聞こえた懐かしい声は、涙を含んでいて。
見えた顔、やっぱり酷く泣いていた。
「…………かあ、さん……」
「っ…………杏………っ……」
ぎゅぅと抱き締められ、懐かしい匂いが胸いっぱいに広がった。
顔を横に向ければ、泣き顔を見られぬよう手で覆いながらも、静かに泣くお父さんもいて。
そして、その、奥には、もう1つ、知る顔。
その人は、涙で溢れるこの空間には似つかわしくない、悔しそうで苦しそうな顔をしていて。
私はこの状況と、その顔で、悟る。
あぁ、そうか…………そっか……
私は、離して、しまったんだ。
