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暗闇で恋しましょう

第35章 そして、これからも

…………いいや。


違う。


離していなくても、消えてしまうことは、分かっていたじゃないか。



「杏…………辛かったね……辛かったね………もう、大丈夫だから」



いつの間にか、私の傍に来ていたお父さんが、私の涙を拭ってくれた。



………ごめんなさい



きっと今日に至るまで、この2人は私を捜してくれていた。


TVでもラジオでも、ずっと呼びかけてくれていたはずだ。


ひぃちゃんの家には、TVもラジオもなかったから、その真相は分からないけれど。


私はそんな2人からの愛を、仇で返すことしか出来ない。


だって、この涙は、2人に再会出来た嬉し涙なんかでは決してない。


これは、2人が憎んでも憎みきれないであろう誘拐犯を思っての、涙なんだ。

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