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暗闇で恋しましょう

第38章 幸せに

そういえばあの時、杏ちゃんのお母さんは何か気付いている節があったな。


俺に刺すような視線、向けてきたし。



ここだけの話、あの視線に少しばかり救われた俺がいるんだよなぁ



口が裂けてもこんなこと、声に出しては言えないけど。


何にしろ俺はよく耐えたよ。


あの状況から逃げることも。


あんな無責任野郎から杏ちゃんを奪い去っちゃうことも。


偉い偉いなんて、心の中で自分を褒めていればこんこんとドアが叩かれる音。



「どうぞ」

「失礼します。午後からの予定をお伝えしに参りました」



ドアが開かれ入ってきた女性は、姿勢正しく清くすらっと立っていた。


あんまり見るとセクハラうるさいご時世だから、と思うもその出で立ちはどこか目を引く。

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