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暗闇で恋しましょう

第38章 幸せに

そして、出来上がった偽物のヒーロー。


どこに居たって告げられるのは感謝の言葉。


杏ちゃんの両親にさえ、涙を流し感謝された時には、苦しくて仕方なかった。


違うのだと、何度口をついて出そうになったか分からない。


それでも、唇を噛んで我慢した。


ここで俺がいなくなったら、杏ちゃんはどうなる。


真実など誰も知らぬまま。


杏ちゃんに向かって吐き出される言葉は全て、愛する人を侮辱するものばかりだ。


杏ちゃんはそれを違うとも否定出来ず、だからといって肯定することも叶わず。


ただでさえ弱っている心は瞬く間に壊れてゆくんだろう。



「っ…………」



それを分かっていながら、どうして本当のことを言えるのか。



そう思えば、飛翠、お前の判断は確かに正しかったんだと思う

それでも………それでも、俺はお前を恨まずにはいられないよ



涙ながらに笑顔で話す杏ちゃんは、お前を待っていたんだ。


お前を、待っていたんだよ。飛翠。








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