暗闇で恋しましょう
第6章 罪を背負うのは
俺には、寝れば必ず見る夢がある。
幼い少女が小さく丸まって震え、俺を睨む夢。
その少女が杏ということも、なぜ睨んでいるのかも全て分かっていて。
分かっている上で、俺はその少女が逃げれる道をとことん塞ぐのだ。
そして、泣きながら少女は叫ぶ。
“ーーーーーー返して”
何を返してなのか未だ聞き取れないまま。
家族なのか、はたまた自由なのか。
それを見、起きた後、杏が隣にいると俺は心底安心するんだ。
俺は、そのことを安心していい存在じゃ無い筈なのに。
そればかりか、安心する心の裏に潜むのは
杏をこの檻から出すものか
そんな黒いもの。
「まーた煙草」
聞き覚えのある声に振り向けば、知る顔。
もはや口癖のそれは、毎度のことながらスルーを決め込む。
そして、顔を再度海の向こう、工業地帯に向ける。
「無視かよ。杏ちゃんと暮らしてんだから、止めなっつってんのに」
俺の口元から煙草を奪おうとする祥人の手を、ひらりと躱す。
「あいつの前では吸ってねーよ」
「そういう問題じゃないだろ」
じとりと恨めしそうに俺を見るけど、こいつはいつ学習するのか。