斉藤太一です
第13章 再会と約束
そう言って
まだ
汗でぬれている
頭を優しくなでてあげた
しずくは
笑わなかったけど
少し
落ち着いた顔を見せて
「ほんと?」
と聞いてきた
「ほんとだよ
だから
僕が帰っても
いい子にしてられる?
大丈夫?」
「平気!」
「お利口さんだね」
平気なんかじゃ
なかったと思う
しずくは
やっぱり
笑っていなくって
でも
褒めてもらったことを
無しにしたくなくて
平気だと
強がったんだろうと思う
子供でも
子供なりに
僕に気をつかったのかもしれない
父親だと
思っていても
一緒に過ごしてなんかいない
名前だけの
おとーさんには
我儘なんて
言えなかったのかもしれない
かすみと・・・同じか・・。
しずくが
泣いてしまわなくて
ほっとしていたけど
僕は
結局
かすみからも
しずくからも
本音を
聞くことのできない
そのくらいの人間なんだと
思い知らされたようで
玄関を
出る頃
僕の
あんなに
高揚していた気持ちは
どこかに
消えて無くなってしまっていた