斉藤太一です
第21章 運動会
少し歩くと
しずくは
眠ってしまい
それを見た
かすみが
ポツリと呟いた
「強く・・・
強く育てなきゃって
頑張り過ぎてたのかな・・・
こんな
私が
ひとりで育ててたから
強い子に
育てなきゃって・・・」
「かすみは
いいママだよ」
「・・そんなことない
斉藤さんみたいに
うまくできないもの
叱ってばっかり・・」
「かすみが
頑張ってるのを
僕は知ってるよ
しずくのために
しずくの事を愛しているから
叱ってることだって
僕は
ちゃんと分かってる
それでいいんだよ
さっき
僕に言ってくれたじゃないか
いつか
分かってくれるよ
しずくが
可愛いからこそ
かすみが
厳しく育てたんだって
それを
ありがとうって
思ってくれるときが
いつか必ず来ると思うよ
大丈夫
かすみは
いいママだよ」
手を
握ってあげたかった
かすみの手を
包み込んで
あげたかったけど
眠ってしまった
小さな姫を
おぶっていて
僕は
何もしてあげられなかった
だから
せめて
僕の腕が
かすみの肩に触れるほど
近づいた
強いと思っていた君が
弱いところを見せるたびに
思う
君のため
しずくのために
僕は
何ができるんだろう・・と。