テキストサイズ

悪魔的ドクター

第10章 恐怖

あたしは
ひたすら走った。



『後ろにいる』
その恐怖が頭から離れない。


『ついて来てる』
見てもいないのに錯覚を起こす。



大学を出てから
無我夢中で走り続けた。



━━━━━━……




到着したのは
先生のマンション。


病院に行けば先生に会える。


だけど
行かなかった。


行けなかった…


こんな姿
誰にも見られたくなかったから。




マンションには階段がなく
仕方なくエレベーターを待つ。



「はぁ…ッ」



苦しくなってきた。

全力で走ったからか
発作がきた…


だけど、こんな所で倒れてる場合じゃない。


こうしてる間にも
男は近付いている気がしたから…




ようやく降りてきたエレベーターに乗り込むと、隅の壁に寄り掛かった。



「ゴホッ」



本格的に咳が始まり
苦しさが増す。


鞄に入ってるはずの吸引器は
どこにも見当たらない。


そうこうしてる内に
エレベーターは20階で止まり
扉が開いた。


走る体力なんて残ってないあたしは、壁を伝いながら部屋に着く。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ