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エスキス アムール

第9章 変態熊吾郎






「やはり、噂通りの方だ。」

そういって、にやりと笑う彼。

まるで
待っていましたとでも
言うような豹変ぶりだ。



「…はい?」


「観月製薬は、
もはや貴方が回していると専らの噂ですよ。」


「いえ。
副社長に
何も権限はありませんから。」


その言葉に、彼は立ち上がった。


「謙虚だなぁ。

まだ、社長は帰って来ない。
本音を聞かせていただきたい。

本当は、
今日は大野さんのための接待なのですから。」


やばい。
俺の中の
リトル大野がそう叫んだ。

何がやばいんだい?
教えてくれリトル大野。


やばいと、
警告を出された彼は
俺の方に歩いてきて

すぐ横に座り、
また、ニヤリと笑う。


俺の見たて違いだ。

多分彼は爽やか好青年じゃ、



ない。



この感じ、確かどこかで……。

考え込む俺に、

木更津さんは
更に近づいて耳元で言う。



「大野さんは、
いずれ社長になるのでしょう?」


そんなことを
ベラベラ話すわけないだろう。



「……。」


「ガードが堅いな。
そういう所も堪らないんだけど」



…………………


てん


てん




……今、何て言った…?







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