エスキス アムール
第9章 変態熊吾郎
「社長になるつもりは無いの?」
「……。」
タメ口になりやがった。
俺はこの感じを知っている。
以前、
経験したことがある。
苦い思い出だ。
しかも、
苦い思い出を作り出した張本人は
奇しくも、
後ろにいる三嶋良子である。
やっぱり、
こいつと関わるとロクなことないじゃんかよ。
変態熊吾郎へのものとは違う、
俺の中の別の警報が
鳴っているのがわかった。
「…それとも、…観月製薬の社長にはなるつもりが無いのかな?」
まるで俺を試すかのように、
じっと見つめて
俺の反応を伺っている。
メンタリストか。
俺がずっと黙っていると、
耳元から木更津さんが離れた。
「まあ、今日はいいよ。
波留くんと話せれば
それで良かったんだ。」
ああ、そうかい……って、
「…波留くんだと?!」
思わず叫んだ。
こうなったら、
礼儀もクソもない。