エスキス アムール
第11章 デート
「何かあったか、オーノさんと」
いつの間にか
入ってきていたシュウの声に
首を振った。
「ホント、写真だな。」
そっと私の絵を撫でる。
彼が入ってきたところを見ると、
もう閉店の時間なのだろう。
お客が
入ってこなかったところを見ると、
シュウがお客を
取らずにいてくれたことが
容易に想像できた。
「シュウ…っ、
わたし…わたし…っ」
「いいよ、いいから。」
シュウは、泣きじゃくる私を
そっと抱きしめた。
小さい子供をあやすように、
ゆっくりゆっくり、背中を撫でる。
「良い絵だよ。ほんとに」
シュウの
優しい声が響く。
私が初めてお客をとって、
呆然としていた時も、
酷くされて、泣いていた時も、
シュウはいつだって
私のことを気遣ってくれた。
いつも、こうして
私を抱きしめてくれた。
私は
シュウの優しい声を聞いて、
背中にそっと、
腕を回した。