エスキス アムール
第2章 オオノさん
「今日は
ここに来るつもりだったから、
接待って言葉が出る前に
予約いれちゃった。」
まるで、
てへっていう声が
聞こえそうなくらい軽い。
「大丈夫大丈夫。
次期副社長みたいな奴がいてさ、
そいつの
試験的なもんなんだよね。
いっつも付いていってたから、
今日は一人でやってこい!って」
心配そうに見つめる私に、
笑ってそう言う。
「なんか…ごめんね。」
罪悪感から謝った。
いつ私は
あなたの事を
手放せるのだろうか。
「なんで
はるかちゃんが謝るの?
俺が来たくて来たんだよ。
来たかったから、
早く仕事終わらして
19時ピッタリに入店……あっ!!」
「やっぱり…嘘つき(笑)」
「や、違…っ」
「開店と同時に
来てくれたんだね」
そう言って
大野さんに擦り寄ると、
大野さんは
バツが悪そうに
目をそらして顔を赤くした。
「ごめんね。
寝ちゃってて…
30分も
何して待ってたの?」
「…え…と、別に、」
「すぐに
起こしてくれれば
良かったのに」
「あ、…の」
大野さんの顔は真っ赤だ。
だけど、答えようとしない。