エスキス アムール
第2章 オオノさん
ここは
シュウが言ったように、
イイとこの人しか来ないから、
来るのは皆、
何処かの社長か副社長か、
とにかく
お金を持っている人しか来ない。
だからと言って、
必ずしも
丁寧に扱ってくれる訳ではなく
お金をたくさん出すんだから、
というスタンスで
無茶をさせる人もいる。
大野さんは、
誰もが知ってる
大企業の副社長な訳だけど、
無茶をいう人ではなかった。
ここは
『そういうトコロ』なのに、
すぐに身体を求めることはせず、いつもベッドに寝転んで、
恋人のように
イチャイチャしながら
お話をする。
大野さんは、
私の手を取ると
私を見つめながら
自分の綺麗な指を絡めた。
それを見ただけで、
ゾクゾクする。
笑って
私の頬を反対側の手で撫でると、そっと額にキスをした。
「…ん」
他の人じゃ
声なんかでないのに、
大野さんだと出るのは
何でだろう。
何が違うんだろう。
大野さんの目を見つめながら、
ぼんやりと考えた。
それを見て
彼は微笑むと、
また横になる。
「今日はね、
大変だったのに、
夜に飲み会やるっていうんだよね。
…バックれてきちゃった!」
「えぇ?!」
飛び起きた私に、
大野さんはクスクスと笑う。
「だって、
それって飲み会という名の接待でしょう?」
「うん!」
キラキラした顔を
私に向ける。
うん!じゃないよ。
ダメでしょ。
大企業の副社長が
接待すっぽかしちゃあ。