エスキス アムール
第13章 トラップトラップ
「こんにちは」
その人は、
挨拶をすると、微笑んだ。
「ご無沙汰しております、
……三嶋様。」
「あら、覚えているの?
一度しか来ていないのに。」
「…お客様の
顔と名前は忘れません」
「…そう。
波留に、
聞いたのかと思ったけど」
彼女は、わざとらしく
大野さんの名前を
強調して言った。
「波留、さん、とはどなたでしょうか?」
「惚けないで!
この間、一緒にいたのあなたよね?」
全部、この人はお見通しだ。
大野さんのことを
つけていたのだろうか。
何も答えずにいると、
「波留も、
こんなところに来るなんて、
はしたない。
汚いわ。」
「大野さんは、
身体が目的で
来ているわけではありません!」
「認めるのね?
波留と知り合いなのを」
また私は黙り込んだ。
何を言いに来たんだ。
この人は、大野さんの何なんだ。
名前で呼ぶほど仲が
良いのだろうか。
私は、嫉妬なのかなんなのか、
よくわからないまま
彼女のことを睨みつけた。