エスキス アムール
第17章 夜中の襲撃
時間はもう深夜すぎている。
人なんて、
誰一人歩いていなかった。
風呂上りだから、
Tシャツにスウェットという
最悪な格好だ。
おまけに、髪の毛を
乾かさないまま来たから
頭が凍りそうで、
冷たい風を切って、
肌がヒリヒリする。
でも、そんな事はどうでもいい。
シュウくんが
なんで俺の家を
知っていたのかなんていうのも
どうでもいい。
とにかく
会いにいかなくちゃならない。
『人物のデッサンは
好きな人じゃなきゃ描けないんだよね』
一年前だろうか。
彼女が言った言葉が、
蘇る。
シュウくんが持ってきてくれた
スケッチブックには、
俺の顔がたくさん描かれていた。
昔彼女が言ったことが本当ならば、
つまり、そう言うことだ。
鈍感な俺だってわかる。
今なら、彼女が
冷たい言葉を俺に投げかけた理由が
わかる気がした。