エスキス アムール
第1章 ジゴレット
「んっ…あっ…あぁ、ん」
そこは
賑やかな街から少し外れた
静かな場所にひっそりとある。
人の声、
車の音、
店から流れる音楽、
そんなものは一切聞こえない。
一度夜になれば、
その建物があるのかさえ、
わからない。
街から
少ししか離れていないのに、
こんなに静かなのは
どうしてだろうと、
私は、何も生み出さない
非生産的な行為の最中によく考えた。
こんなに声が響いているのに、
外には聞こえない。
外の音も聞こえない。
二階の個室で男の人と二人、
相手の欲望を受け入れ
意味のない行為に明け暮れる。
そうしてそれが終わると、
残るのは、
温かい気持ちや、
ドキドキでもなく、
お金だ。
何て孤独なのだろう。
私は何をしているんだろう。
そう思うと、
笑いがこみ上げてきた。
「…悦いの?」
全く意味の違う笑みを、
プラスの方に受け取ったその男は
満足そうにそう言った。