エスキス アムール
第1章 ジゴレット
「ん…っふ…ぁ」
別に
悦い訳じゃない。
だから、
「うん」とも言えない。
その代わりに、
いかにも気持ちいいです
というように声を出し、
微笑んで男を見上げて見せた。
「あぁっ…」
それを見て、
ようやく迎える相手の吐精。
私は心の中で
ホッと息をつき、脱力した。
「また来るよ、
アカリちゃん」
そう言って
目の前におかれる札束。
「ありがとう。
待ってるね」
そう言って、
男に笑いかけた。
心にもないことを。
いや、来てもらわないとお金が足りない。
一応、心にはあるか。
そんなことを考えながら、
手を振った。
「おっつかれー!
今日はどうだった?」
お客さんが帰って
部屋で寝転がっていると、
そんな声と同時に扉が開く。
それは
見慣れた顔だった。
ここのウェイターだ。
「どうって…
良いことなんて
あるわけないじゃない。
なかなかあの人イカないんだから。」
「ちがうよ。
そこじゃなくて、お金!」
ちょっとは
はずませてくれたんじゃない?と、
目を輝かせている。