エスキス アムール
第17章 夜中の襲撃
「…なに言ってるんですか?
好きじゃないです!」
はるかちゃんは
ありったけの力を込めて
俺を振り払った。
「じゃあ、これなに?
これでも、そんな事が言える?」
そう言って、
スケッチブックを広げる。
「…な、…!」
「前にいってたよね?
人物画は、
好きな人じゃないと描けないって。」
「…そんなの、嘘です…っ」
「じゃあなんで、
描いてあるの俺だけなの?」
はるかちゃんは、
俯いて俺から一歩離れた。
「…かえってください…」
できた隙間を埋めるように、
今度は俺が一歩前に進む。
そうすると、また、彼女が一歩下がった。
「…三嶋良子になにを言われた?」
「…っ、」
彼女は
その名前に身体を震わせ、
俺を驚いた顔で見つめた。
「…三嶋さんは、悪くありません…
私が、私が悪いんです…っ
こんな仕事につくから…
自業自得です」
そうやって、彼女は俯く。
俺は、また一歩進む。
今度は、
彼女は下がろうとしなかった。