エスキス アムール
第17章 夜中の襲撃
「あのねー、
彼女とは
ほとんど話したことないんだよね。」
「ほとんどって…?」
「えっと、一言喋ったかな、
くらいかな。」
「えぇ?!」
すごく驚いた私に笑う。
本当に?と念を押すと、
うんうん、と頷いた。
「なに言われたの?」
「…私と波留には
10年分の思い出があるって…」
「10年!!」
猫は驚いて
指を折って数え始めた。
相変わらず、綺麗な指だなと思う。
「大学は、一緒だったんだよ。
でも、そん時も
ほとんど話したことなかったし。
それから
6年は会ってなかったから…。
思い出って言ってもな…。」
そう言って、困った顔をする。
「だって…それで、好きだって…」
「うーん、
だからなんで
彼女が好きでいてくれてるのかも
よくわからないんだよなー…。」
そうだったんだ…
てっきり、
長い付き合いなんだと思ったいた。
でも、きっとこの人のことだ。
知らない間に
自覚もなく人の心を奪ってく。
それで
何でかなって
言ってるに違いない。