エスキス アムール
第17章 夜中の襲撃
「他には?」
「え?」
「他に、不安になることない…?」
不安だらけですよ。
猫って知ってる?
ツンとして、
近寄らないイメージ持ってる人
多いでしょ?
違うのよ。
本当は凄く愛情深い生き物で、
一回心を許すと、
ガードなんてゆるゆるなんだから。
それでいて
自分で知らないうちに
フェロモン振りまいといて、
何のことって顔をする。
犬には首輪つけておけば
いいかもしれないけど、
猫はフラって
どっか行っちゃうんだから。
いつ誰に狙われるかなんて
わかったもんじゃない。
不安だらけだ。
「…」
「よし、じゃあ、さ?」
まだ何にも返事してないのに、
顔を前に向けて待っている。
ブローしてもらうのを。
ここはトリマーじゃないんだ。
「もう。」
スイッチをいれて温風を当てると、
「あー、あったけーなー」
猫は目を瞑って
ブローの感触に酔いしれた。
ふわふわの髪の毛を乾かしていると、
本当に動物を乾かしているみたいだった。
「トリマーになった気分…」
「なにー?」
「…何でもない。」