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エスキス アムール

第19章 良ちゃんの恋2






だけど、

もう一度、
彼と話したかった。


今度は
傘を貰った地味な私ではなく、

キラキラとした
別人として、

彼と会って話したかった。

そのために
猛勉強に猛勉強を重ねた、高校生活。

彼と話すことだけを夢見て、
行った努力は実を結んだ。



高校を卒業すると同時に、
髪の毛も染めて、メガネを外し、
髪型も変えて化粧もした。


高校が同じだった人でさえ、
私だとわからなかったほどだ。




入学してしばらくすると、
彼の噂はすぐ耳に入ってきた。

幸い、運良く
彼と学部が同じだったのだ。


その中に
綺麗な顔をした秀才がいると。
早く、会いたかった。



「…あ、すみません。」


「こっちこそ…あ…!」


「…?」


授業中にも見つけることはなかったが

彼とは、
廊下でぶつかるという
思わぬ形で再会することになった。


しかし、彼が
変わりすぎた私をわかるはずもなく


私も何も話せず、そこで終わった。



その後も、
なかなか自分のことを言い出せないまま、
彼を遠くから見つめることしかできない。


そして、私は、
彼にあの傘のことを話せないほどの、


罪を侵した。


彼と彼女を別れさせ、

二つめの恋まで奪ってしまった。



気がついてくれない彼への苛立ちで
してしまう、私の罪な行動。

一方で、申し訳なさから、
あの時のことを言えない、悪循環。



彼とは、どうしても、
交わることができないのだ。

だけど、
彼のことを忘れることができない。




知らない電話番号から
電話がきた。


それは、
長い恋の終わりを告げる、

哀しい哀しい電話だった。







良ちゃんの恋2ー終












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