エスキス アムール
第20章 彼女との時間
「もしもし?」
俺は意を決して、
できるだけ
コンタクトを取りたくない
あの人に、電話をした
「もしもし?
まさかそっちから
かけてくれるなんてね」
電話の向こうの奴は
とても嬉しそうだけど
この間のように
テンションは高くない。
「僕の声、
聴きたくなっちゃったの?」
「違う。やめろホモ野郎」
ホモ、いや、彼の言葉に
全力で否定した。
ホモ野郎もとい、
木更津に電話したのは
もちろん理由があるからだ。
「まさか、あてつけみたいに
報告の電話じゃないよね?」
まさか。
「お前……、
今も興信所つかってるの?」
「見たかったなあ。
波留くんが
Tシャツにスウェットで
全力疾走する姿。」
「お前!
いつまで雇うつもりだよ!」
どういう伝達システムに
なってんだよ。
細かく伝えすぎたろ。
だいたい
何時間勤務だよ。
「で?何の用?」
「あ、ああ。
ちょっと、
頼みたいことがあってさ。」