エスキス アムール
第21章 彼女との生活
「…あ…、」
私の反応にクスクスと笑う彼。
日付に無頓着な私は、
すっかり忘れていた。
「だから、こんなに混んでたんだ…」
「今更かよ!」
彼の言うとおり、
今更だ。
だから、こんなに混んでて
だからこんなに、
いつもと違う感じがしたんだ。
ようやく、合点がいく。
「はるかちゃん、ここ。」
そう言って、
彼は自分の横をさした。
そろそろと、
彼の横にいって座ると、
「手を出して。」
私の手を握って、
その掌を開かせる。
そのまま手を差し出していると、
大野さんは
何かをしようとして一瞬止まって、
なにか躊躇った。
「やっぱ恥ずかしいから、これ。
はい!」
そう言って、
掌の上に何かが置かれる。
「…これ…。」
そこには、
ひとつの、指輪。