エスキス アムール
第3章 めぐり合わせ
【一年前】
「今日はどうよ?」
お店の部屋から
街中の光るネオンを見つめていると、
何時ものように
シュウが今日の収入について聞いて来た。
「んー、まずまず。
今日は一杯脱いだんだけどねー、無茶させる人がいなかったからボッタくれなかった。」
そう言って、
今日の分をシュウの前に広げた。
「まあ、
この位もらえればいいもんだよ。普通の人たちと比べりゃさ。」
脱ぐことが当たり前になるのが、すごく嫌だった。
だけど、
こんなことを何年も続けていると、感覚が麻痺してくる。
普通の人、普通に働いている人、シュウの何気無い一言で、
私の仕事は普通じゃないと気づかされることが多かった。
「次はね、4人組かな…?
アカリ指名だよ。」
「四人?5Pでもするつもり?
やだよ。体が持たない。」
悪趣味すぎる。
変態の集団なのか。
「んー、でもね、
料理フルコースと、
お酒の注文だから、
接待で使うのかも。」
うちの店は、
身体を売るのが全てではなく、
接待の時に使われることも多い。
街から近いのに、
静かで落ち着いていて、
少し変わった店。
そんな所が人気で、
知る人ぞ知る、
接待場所となっている。
「てことは、
私はお酌係みたいなもんだから、またボッタくれないや。」
「誘って見たら?
コンナコトもできますよってさ。」
「やだよ。
いくらお金のためとはいえ、
好きでもない人を誘うなんて。」
こっちは金額を提示してきたら、それに応じた対応をするだけだ。
「まぁ、
今日は諦めて
お酌に専念するか。」
「頑張れ。
終わったらさ、
ラーメンでも食いに行こうよ。」
「シュウの奢り?やったー!」
いっぱい
トッピング付けてやろー。
心の中で
腹黒いことを考えながら、
予約が入った準備中の部屋に向かった。