エスキス アムール
第23章 別離と別離と別離
「おはよう」
走っていって、要に声をかける。
いつもだったら、
すぐに振り向いて、
おう。と、返してくれる。
朝は低血圧だから少し不機嫌だけど、
それが、中学校から変わらない、
要だった。
だけど。
この日ばかりは、
はるかちゃんのように、
何かが違う。
「………」
要はいつものように反応しない。
聞こえてない
わけじゃないよな。
「要、おはよう」
また声をかけると、
ようやく彼は振り向いた。
ただ、朝だから不機嫌なだけ。
最初はそう思ったのに。
振り向いてこちらをみた瞳は
鋭く、
射るような、
冷たい冷たい瞳だった。
一気に固まる。
え…?
なに…?
「……要…?」
「お前、正気かよ?」
訳が分からず、動揺する俺に
要は怒りを抑えきれない様子で、
むしろ、
それを通り越して呆れているように
その言葉を言いながら
睨み付けた。
全く見に覚えがない。
…何のことだ?
ここ最近、
要とは会えていなかったし
何もしていない。
「…何のことだよ」
「…っ、お前!
ふざけんなよ!!!」
俺が一度声を発すれば、
要は俺の胸ぐらをつかんで
自分の方へ引っ張って
そこに、怒声を響かせた。