エスキス アムール
第23章 別離と別離と別離
「何のことだよ…」
要のすごい剣幕に驚いて、
そう繰り返すことしか
できない俺に、
要は俺を睨み付けて
一枚の紙を押し付けてきた。
「いいよな。
権限持ってるやつは
顔も見ずに紙切れ一枚できれて。
…お前が
そんな奴だとは思わなかったよ」
渡された
一枚の紙を見る。
「…な…、」
なんだよ、これ……?
意味が、わかんねーよ…。
紙を持つ手が震えた。
そこには、
『解雇予告通知書』
と書かれていて。
この度、貴殿を下記の理由により解雇しますことをここに予告します。と、
定型文がずらずら書かれたあと、
本来、社長の名前が
書かれるはずの通知人の
名前を書く場所には、
なんと、
『副社長 大野波留』
そう、書かれていた。
ちがう。
ちがう。
誤解だ。俺じゃない。
「違う。俺じゃない!」
「大分前から、
お前が俺に罪を擦り付けて
解雇するんじゃないかって
噂が流れてたんだよ。」
俺の否定に耳を傾けようともせずに
要は冷たく俺を睨みながら、
やっぱり噂通りだったな。
そう言って俺を突き飛ばした。