エスキス アムール
第23章 別離と別離と別離
パラリ
手紙が手のなかから滑り落ちる
情けない音がした。
そうだ、
「スケッチブック…」
スケッチブックも
持っていってしまったのだろうか。
彼女が書いていた絵。
それはいつも、
食卓の小窓に立て掛けていた。
「……」
しかし
そこにはもう、
スケッチブックはなく。
ふと、足元のゴミ箱をみたとき
愕然とした。
『デッサンの人物画は
好きな人しか描けないの』
その言葉がよみがえる。
スケッチブックに俺の顔が
描かれていたとき、
本当に嬉しかった。
しかし、その絵は今、
グチャグチャに丸められて
捨てられている。
描かれていたもの全てだった。