エスキス アムール
第24章 逃亡日記
人生初の
壁ドンがこいつだなんて…。
軽い絶望感を味わう。
彼の目を見つめれば、
彼は熱を持った目で俺を見た。
この目を俺は知っている。
危険信号が出るやつだ。
だけど、
このときばかりは、
そらせなかった。
そらしたほうが、
良いに決まってるのに。
「…ん…、」
吸い込まれるように、
木更津の顔が近づいてきて、
俺の唇に彼のものを重ねる。
どちらの唇も、熱を持っていた。
少しだけ抵抗しようとした手も、
彼によって絡め取られて、
すぐにそれを諦めた。
「…はぁっ…」
木更津に唇を吸われて
離れると、
声が漏れる。
俺が彼を睨みつければ、
彼はすっと、目をそらした。
「僕は紳士な方だと思うよ?」
「は?」
「だって、好きな人がさ、
涙で瞳潤まして、
こっちをジッと見つめてたらさ。
誰だってしたくなるでしょ。」
「…ふざけんなよ」
「だ、だって舌はいれてないし
唇吸っただけだし」
「ふざけんな!」
「我慢するなんて
無理に決まってるだろ!
僕はキミが好…んっ!!」
一瞬だった。
自分でだって
何が起こったか分からない。
俺はどうしてしまったんだろう。
彼が顔を真っ赤に染めて、
言い訳する姿を見て、
何かを言い終える前に
気がついたら、
唇をふさいでいた。