エスキス アムール
第3章 めぐり合わせ
「……」
そんな事を
心の中で考える私をよそに、
大野さんは眉間を寄せた。
もういいじゃんいいじゃん!
わかってないみたいだしさ。
北山さん、
少し黙ろうか。
心の中で必死に訴える。
だけど、
届くわけもなくて、
「て、テクニック…、
30分って…
つまり…?」
「あぁ、知らなかったんですか?
ここは接待でも使用可能ですけど、"そういうトコロ"でもあるんですよ。」
動揺する大野さんに対して、
北山さんは、
得意げに笑って言った。
いや、あなたの店じゃないけどね。
北山さんの言葉に、
ようやく店のシステムを理解した大野さんは、
私の事をまじまじと見てきた。
この子が売春まがいの事をするのか。
とでも思っているのだろうか。
「どうかね?」
「いや、私は…、
緊張してしまいますので。」
「ハハハハ、緊張ですか!
そんな
遠慮なさらずに!」
だから、あんたの店じゃないつーの!
そんな北山さんに、
大野さんは必死に抵抗した。
そりゃそうだよ。
それが普通だよ。
心の中で頷く。
ちょっとは見習え。変態ヤロー。
…なんて死んでも口に出せない。
私はにこりと笑うと、
「では、お水を。」
そういって、
部屋を抜け出した。