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エスキス アムール

第30章 彼の変化





僕だけが余裕がない。
そんなつもりなかったのに、
最近は、この男をどうしたら
僕のものにできるのか

ということしか考えていなかった。



彼がこの家を出ていくのに
もう、そんなに時間はない。
それまでに。

何としても、
彼をとどめておきたい。
そんな邪な考えしか、今の僕には浮かばないのだ。



だけど、
そうさせたのは紛れもない、
彼だ。

彼が僕を誘う。
彼に触れるたびに、独占欲が
僕の心の中を黒く渦巻いて
湧き出てくる。

そのたびに、
もう手放せない。
どうしたらいいのかと
焦燥にかられる。



彼はそんな僕に気が付いているのだろうか。
いや、気が付いてなんかいないだろう。


彼ばかりが余裕で。
僕ばかりがどんどんおかしくなっていく。


その状況に腹がたって
彼の快楽も考えずに
腰をひたすら打ち付けた。



彼はそのまま
果てると同時に気を失った。
快楽で涙に濡れた、
きれいな顔を指でなぞる。


彼の身体をきれいに拭いて
処理をすると、

彼を抱きしめた。


彼はいつ、僕のもとから
離れて行ってしまうのだろう。
このまま眠って
次に目を開けたとき、

隣に彼はもういない気がして。



逃げられないように
力を込めて彼を抱きしめると、
彼からは、切なげな吐息が

ひとつ、漏れた

明日も、いてほしい。
明後日も。

ずっと、ずっと…
彼がいなくなることを想像したら、力を緩めることもできずに、

その日はまるで
眠ることができなかった。



















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