エスキス アムール
第31章 彼の嫉妬
そもそも、
なんで俺はこんなにも
怒ってるんだ?
木更津が
毎日のように
イチャイチャ電話してるから。
そいつと、今度は
俺を置いて食事に行くとか
言いやがるから。
って、これはつまり……
いやいやいや。
俺はそんな男じゃない。
嫉妬なんてするような
器が小さな男じゃない。
そんなことない。
…違う。絶対に違う。
確かに最近、
木更津はおはようとおやすみのキスも、抱きしめても眠らなくなった。
こっちから誘うばかりで
誘っても、キスをしても
あいつは戸惑った顔をして
俺を受け入れる。
もう、俺のことを
好きではないのだろうか。
もしかして、その電話の奴のこと…
無理して
俺のことを抱いてるとか?
早く俺がこの家を出ていくのを
待ってるとか…?
それは困る。
とても困る。
もう、この家に住むつもりで
この間、自分の家の
契約更新をしなかった。
まだそれを、
彼には言っていない。
そのときは
喜んでくれると思い込んでいた。
木更津の気持ちがほかに行っているかもなんて思いもしなかった。
急に不安になる。
こうして今家を出てきたのも
彼はやっと出て行ったと
喜んでいるのではないか。
怖くなって、
木更津の家に急いだ。
家を飛び出している場合じゃない。
急いで扉を開けて、
リビングに駆け込むと、
そこに彼の姿はなかった。
「木更津…、木更津!」
嫌な予感がして
手当たり次第に部屋のドアを開ける。
「どうしたの?波留くん」
寝室に飛び込むと、
木更津は呑気な声を出しながら、
クローゼットから様々なジャケットを引っ張り出して
自分にあてていた。
「……なにやってんの?」