エスキス アムール
第31章 彼の嫉妬
「よかった。僕、
セフレじゃなかったんだ」
「…?」
彼はほっと息をついて
俺をやさしい瞳で見つめた。
なに?と聞くと
首を振って
彼は俺の髪の毛に触れる。
セフレなわけがない。
気持ちがなきゃ、セックスなんてできるわけがない。
…最初こそは勢いだったけど。
彼は何かを勘違いしていたのだろうか。
その言葉の意味は
よくわからなかったが、
彼はとても嬉しそうだった。
「…木更津は…?」
「ん?」
「…俺のこと…
もう、いやになった…?」
その言葉に、彼は驚いた顔を一瞬見せて、すぐに優しく微笑んだ。
「嫌になったりしないよ。
僕はずっと、波留くんが好きなんだから。」
久しぶりに、彼が自ら
俺に手をまわして抱きしめる。
その温かさと、気持ちがホっとしたことで、
自然と瞼が重くなってきた。
「夕飯は外食にしようか?」
「…ん…。」
「波留くん眠い?
寝てもいいよ?」
「ん…。」
彼に手をまわして頭を
胸に擦り付けると彼はクスリと笑う。
俺の頬にキスを落として
おやすみと、囁いた。
久しぶりに戻ってきた
彼と自分だけの習慣に
顔が綻んで
彼のぬくもりと、
やさしい鼓動に誘われて
夢の中へと引き込まれていった。