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エスキス アムール

第33章 彼のシゴト




「ニューヨーク?
また、なんで?」


「あのデザインの仕事さ、
ニューヨークに伝手があるんだ
商品を作ってくれそうな人がいて、
その人にあたってみようかなって。」



その人は大学時代のサークルの
友人だそうで、
その人に連絡を取ったら
好感触だったらしい。


彼は僕のことを寂しそうな瞳で見つめて、その続きの言葉を一生懸命見つけようとしているようだった。

離れたくない。
そう言いたいのが、よくわかった。

でも、そんな心配は何もしていない。
彼の心とは反対に
僕はテンションが上がっている。




「そうか…好都合だな。」

「え?」

「ニューヨークのどこ?」

「ブルックリン…」

「となりだね。マンハッタンだ」

「え?え?」




なんて好都合なんだろう。

木更津製薬は
波留くんがいなくなったあと

観月製薬との共同開発を
打ち切りにし、
アメリカの製薬会社との
共同開発を進めてきた。



このまま、薬のことばかり
力を入れていてもダメだ。
新事業が必要になる。

それを探すのに
色々外国の企業も見ておきたいし、


共同開発を進めていくに当たっても、
これから何かと会うことが必要で。

向こうに住もうかとも考えていたが、
波留くんと離れるつもりもなくて

移住しなくても済む方法を
三嶋に打診していたところだったのだ。


その話をしたとき、
三嶋は、非常にめんどくさそうな顔をしていたのを思い出す。


『方法ならあります。
ただ、私の仕事が増えますけど。』


そう言って、むくれた彼女を
これで笑顔にできるだろう。

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