エスキス アムール
第34章 彼の選択
何も言わずに家に入る。
波留くんはもう家に戻っていて、食事を作ってソファに座っていた。
僕の姿を見るなり、おかえりと笑う。
服を着ても隠れきれていない、首や手首の赤い傷はとても痛々しかった。
その傷を見て胸が痛む。
何も言葉を出せないまま、
見つめることしかできなかった。
ご飯を食べようと笑う彼にまた、胸が痛む。
昨日僕があんなことをしたから、彼は気を遣っている。
僕は明日、ニューヨークに行く。
ここで、今まで通りご飯を食べていつものように寝てしまえば、別れは名残惜しくなるものだ。
波留くんは優しいから
僕が身を引いた理由を知れば、引き止めるに決まっている。
そうして、彼女とは会わないと言うはずだ。
そんなことはさせない。
させたくない。
彼には幸せになってほしい。
だけど、幸せにできるのは僕ではない。
幸せにしてくれる、あの子のところに行くべきなのだ。
「え、ちょ、木更津…っ」
僕は彼の赤くなった手首を掴んで、
いきなりベッドの上に投げ飛ばして上に覆いかぶさった。
何も言わずに近づく僕に
不穏な空気を感じ取ったのか、彼は青褪めて怯えて抵抗した。
その抵抗する手を赤くなった痕の上から
紐で縛り上げ、首元に噛み付く。
「やだっ木更津…っやだ!!」
彼が暴れるたびに
響くベッドのギシギシと響く。
それを抑えつけスボンに手をかけると彼はやだやだと声を荒げる。
その口を手で塞げば、彼は涙を流した。
震える彼のズボンを一気にぬがせて、
いきなり突っ込む。
「……ひっ…」
声にならない悲鳴が彼の口からから漏れた。
彼はガタガタと震えていた。
涙が溢れて口も縛り上げた手も震えている。
まったく、そこに快楽などない。