エスキス アムール
第36章 ファースト キッス
ガードを少し緩めたらこんな感じになるんだ。
可愛い人だ。
そんな彼女を見てそう思ったけど、
また怒られそうだから言うのは自重した。
「花が何故さんざん苦労をして
なんの役にもたたない棘をつくるのか、
その訳を知ろうというのが大事なことじゃないと思う?」
「……え?」
「星の王子様だよ。知らない?」
「小さい頃読んだ事がある。」
「色んな過程があって、その棘もできてるんだって思ったらさ、何だか愛らしくなるよね。」
「何だか、哲学的な本だったんだね。
あれ。」
彼女は嬉しそうに微笑んだ。
他にも言葉を紹介すると今度買って最初から読んでみる。
といって、ネットで早速注文していた。
「あ、もうこんな時間だ。
ごめんね、遅くまで。タクシー呼ぶよ。」
電話を取り出して、
彼女が帰るためのタクシーを呼ぶ。
すると、その間彼女はしばらく黙って、
何かを考えていたかと思うと、
驚くべき言葉を口にした。
「ねえ、波留くん。」
「ん?」
「…私に、
キス、してくれない…?」