エスキス アムール
第36章 ファースト キッス
「リョウコちゃん。」
「……!」
何だか昔に戻ったみたいになって名前で呼んでみると、彼女はみるみるうちに顔を赤くした。
ピンクの頬が真っ赤だ。
「馴れ馴れしく、呼ばないで。」
そう言葉をきつくして言うが、言葉と顔がバラバラだった。
それを見て、何だか笑ってしまう。
「なにわらってるの?失礼ね。」
「いや、単純に、可愛いって思ったから」
「………チッ」
………
……………
…………チッ……?
今舌打ちしなかった?!
舌打ち聞こえたの、俺だけ?!
思わず彼女を見つめると
彼女はこちらを見てため息をついた。
「あのね、波留くん。
そんなんだから勘違いもされるし、ストーカーもされるし、レイプだってされそうになるの!
いい大人なんだから、自覚持ちなさいよ!!」
「………」
驚いて黙ったまま彼女を見つめると、
彼女はまた、舌打ちをして珈琲をすすった。
そして、一息つくと、
またため息をついて、独り言のように呟いた。
「私って、こんな棘があるから可愛くないんだ……。」