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エスキス アムール

第37章 彼を想ふ




彼を最初に目にしたのは2年前。

ある人が主催するパーティーにお呼ばれした時だった。



様々な企業のトップが集まり、
その中に観月元社長もいた。

観月元社長は、至ってコミュニケーションをとるわけでもなく、
じっと女性の方を見つめて品定めをしているだけで。


天下の観月製薬の社長があんなので務まるのかと、
知り合いの社長にさらっと聞いた時だった。



「あの人はただお父さんを継いだだけだからね。
あそこを回しているのは、ほとんど彼だよ。」



そう言って指される人。
その指を辿っていった先には、年寄りばかりの中に花を咲かせたように綺麗な顔をして爽やかに笑う、彼がいた。



「彼は…?」

「大野波留と言ってね。副社長だ。
まだ25歳だけど、なかなか頭も切れるしきっと直ぐにトップになる」


お近づきになるなら、観月社長じゃなくて彼にしておいたほうがいいよと、その人は笑った。



彼を最初に見た衝撃は、今でも忘れることができない。

僕はグラスを持ったまま、
呆然と彼を見つめて動けなかったと思う。
そんな僕を見て、「心奪われたか。」なんて茶化した人がいたけれど、まさに図星だった。


彼は一瞬にして、僕の心を奪っていった。
















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