エスキス アムール
第37章 彼を想ふ
今日は学校が終わって公園に立ち寄り、
絵を書いて暗くなったので帰路についた。
帰り道、お花屋さんの前を通りかかる。
綺麗な色たちが呼吸をしていた。
一度空気を吸い込めば、
側にある花屋の花たちの香りに胸が躍る。
何だか今日はいいことが起こりそうで。
朝からずっと胸がワクワクしていた。
だけど、一日過ごして見てもそんなにいつもと変わらない。
強いて言うならば、
公園で絵を描いていたときに足を止めてもらえたくらいだ。
私は小さなアパートに住んでいる。
貯金があるとはいえ、ある分はあるだけとっておきたい。
なるべくお金を使わないように、家賃ができるだけ安い家を選んだ。
ボロアパートだけど、その古びた感じも好きだった。
少し壁が薄いのが難点だけど、
一人で住むのに問題はない。
今日は何を食べよう。
何か作ろうか。
そう思った私は、やはり気分がいいみたいだ。
何かが起こりそうな、予感がする。
家に帰るだけなのに。
浮き足立つ感情を抑え、
画材道具を抱え直して階段を駆け上がったとき
「……っあ…、」
ドアの前に、
私は懐かしい人影を、みた。
「………っ」