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エスキス アムール

第5章 苦い体験






「じゃあ、俺はこれで…、」



立ち上がって
扉に向かおうとすると、
はるかちゃんの細い指が、
俺の腕をそっと掴んだ。



「せっかくですから、
何か飲んで行ってください。

お代はいただきませんから。」


お礼です。

と彼女は付け加える。



「いや、でも…。」

あまり気は進まない。

だけど、
はるかちゃんが営業スマイルを出す中で、
何か元気がないような気がして断れなかった。



「じゃあ一杯だけ。」

一杯だけだ。


一杯だけ。

そんなつもりは、



俺には、



ない。





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