エスキス アムール
第5章 苦い体験
「あ…こんばんは。」
ドギマギする俺に、
「大野さん!」
はるかちゃんは、
驚きの声を上げた。
だけどすぐに、
妖艶に微笑んで
「きて下さって、
ありがとうございます。」
そういった。
昨日とちがう、
営業体制に入っている顔だ。
それを見て、
なんかわからないけど、哀しくなった。
「いや、昨日さ、
これ…忘れて行ったよね?」
「あ…!
やっぱり私、落としちゃったんですね。
態々、届けに…?」
「…うん。
連絡先も知らなかったからさ。
ごめんね、押しかけちゃって。」
此方は
そんなつもりはありませんよ。
そういうつもりできたわけじゃないですよ。
そういう感じを全力で出した。