エスキス アムール
第39章 ハッピーバースデイ
「社員は?
まだお前一人?」
「あ、うん。
一応、募集はかけたけど。
まだ始まったばかりだからな。
誰もこないよ。」
「それもそうだ。」
一人くらい社員が来てくれれば、ホームページの設置だとか経費だとか細かい計算を任せてデザインに集中できるんだけど。
これに関しては経験者が欲しいけど、経験者がこんな給料もままならない所に来るわけがない。
地道に一人でやっていくしかない。
でも、難しいだろうな。
仕事をずっと家でやっている訳にもいかないので、小さな個室を借りてそこを仮の事務所とした。
電話なんて一個もかかってこない。
通信販売がうまく行けば、募集もかけやすくなるんだけど。
とりあえず、売る所からだ。
これから忙しくなるし
木更津との時間もあまり取れなくなりそうだった。
再会を果たしたとき、彼は嫉妬深く束縛するけどいいかと俺に確認をした通り、俺の行動に対する反応に変化が見られた。
少し家を出るだけでも、どこに行くのかと確認をするし、携帯をいじっているとじっとこちらを見てくる。
彼からの束縛は嫌いではなく、むしろ心地良いものだった。
木更津の気持ちが俺の方に向いているか、確認できる簡単な方法だからだ。
仕事をさせてくれればそれでいい。
他はどんなに縛られたって構わない。
「…あ、」
木更津のことを考えて、あることを思い出した。
そうだ…今月…。
「なあ。三村。
これなんだけど、俺に作らせてくれない?ひとつ。」
「…これ?いいけど…なにするの?」
「ちょっと…使うんだ。」