テキストサイズ

エスキス アムール

第40章 親友と部下

【木更津side】




「暑いなー。」


声に出してみると少しは和らぐかと思った暑さも変わらず、
呟いたことで、余計に暑く感じる気がした。


ニューヨークは本格的な暑さになってきている。
もう少ししたら、日本から社員がやってくるけど、今は自分と三嶋の二人だけなので、冷房はつけないようにしていた。


三嶋が出してくれたアイスコーヒーを流し込むと、少しだけ汗が引いた気がする。



「素敵なスマホケースですね」


三嶋の声が聞こえて、ふと顔をあげると、珍しく机に出したままにしてしまっていた携帯を見ていた。


ああ、これ…


そう言いかけて、スマホに触れると思わず笑みがこぼれる。
木でできたシンプルなデザインに、おしゃれロゴ。

スマホをとったその中には、僕のイニシャルが入っている。


それは、僕が彼をいじめた先日、彼が眠りに落ちそうになりながら、必死に渡してくれた、僕への誕生日プレゼントだった。


自分の手で最初に作ったものを、木更津に使ってほしい。
そういって照れくさそうに渡す彼の顔を思い出すだけで、笑ってしまう。



「恋人からのプレゼントですね。あの日にもらったのですか?」

「うん、彼のデザインなんだ。
もしよかったら、買ってあげてね」


三嶋もシンプルなデザインが好きだから、気に入るだろうと思う。




「順調みたいでよかったです」

「うん、ただ…」

「ただ?何か問題でも?」


声を潜めた僕を彼女は不思議そうに見つめた。



「もうそろそろ一人くらい彼の助けが来ないと、この暑さだしやっていけないと思うんだよね…」








ストーリーメニュー

TOPTOPへ