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エスキス アムール

第40章 親友と部下

【波留side】




「あっち~な~」


仕事をしながら、暑さと戦っていた。
できるだけ無駄な金は使いたくないので、エアコンは使わない。
ニューヨークは本格的な暑さで、忙しいというのに、いちいちの動作を鈍らせた。


暑い。暑いぞ。




パタパタと扇いでみるけど、あまり意味を持たない。


先日、通販サイトが出来上がって、SNSなどで宣伝を始めると、サイトのアクセス数も上がり幾らかの反応が見えた。


日本人からの反応もなかなか良いみたいだけど、課題になるのは送料だ。

ここはニューヨークだから、配達業者と提携をして、三村とも交渉をして安く仕上げることも可能だけど、海を越えるとなれば送料もそれなりにかかる。

それを払ってまで、買ってくれる人がいるかどうか。


そして見積もりも出して、とりあえず売り上げも上げないことには、送料の交渉すらできない。


新しいデザインはどんどんと浮かぶというのに、それを設計する時間が、睡眠時間をいくら削っても足りなかった。

時間をかければいいだけなのかもしれないが、一度やり始めたら止まらないのが自分の性みたいなもので、早く軌道に乗せたいというのが頭にあった。


だからできる限り、できることをやりたい。
もう一人、一人でいいからいてくれたら。

雇いたい社員がいないわけではない。
だけど、経験がない人にそれを頼むのは酷すぎる。
何せ余裕がないから、仕事を一から手とり足とり教えてやれないのだ。


だから、目星をつけている人はいても、その人を呼ぶこともできない。


どうにか経験者が来てくれたらな。
一瞬、一人の顔が浮かんだが、迷惑はかけられないと思い直す。


設計図を広げて溜息をつくと、


コンコン、


と、扉が叩く音が響いた。
その音に扉を見る。


来客なんてあるはずがない。
不審に思いつつも、どうぞ、と声を扉に投げかけると、ゆっくりと扉が開いた。




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