エスキス アムール
第40章 親友と部下
驚かなかったわけではない。
ニューヨークに決死の思いできて、
憧れの人と酒を交わし、
家にまで泊めてもらえることになって。
そうしたら、
その憧れの人はグデングデンに酔っ払って、自分はホモだとバラしてしまったのだから。
だけど、二人の空気感はとても心地好いもので、とても羨ましい。
何故だか抵抗もなく受け入れられた。
酒も入っていたからか、
少し彼らの関係を疑い始めてからは、むしろそうであってくれとあらぬ妄想までしかけたほどだ。
木更津さんは呆れた顔をしていたけど、
何処か嬉しそうに寝てしまった大野さんの髪の毛を梳いている。
髪の毛を梳かれている大野さんも、寝ているはずなのに、幸せそうに口元を緩めていた。
「要くんにはまだ秘密にしておいてあげてくれる?」
「要くん…あ、高橋さんですか」
「あぁ、そうだったかな。
まだ言い出せないみたいでね。」
この子、この間まで女の子が好きだったから。
そう、可笑しそうに笑って彼の髪の毛から手を離す。
俺にワインをつごうと、ボトルに手を伸ばして大野さんから離れようとすると、
寝ているはずの大野さんが、
木更津さんの腕をつかんで引き寄せた。
か、可愛い。
木更津さんは困った顔をしながら、
ごめんね、と俺に謝る。
でも、その顔はまた嬉しそうだ。
大野さんと高橋さんは
中学時代からの親友だったと先ほど聞いた。
女性しか好きになったことがないのなら、親友に言うのは勇気がいることだろう。
こんなことを知ってしまって、
是非会社でもネタにしたいところだけど、我慢しようと心に誓った。