エスキス アムール
第6章 甘い体験
扉の向こうで
待っていたのは、
とてつもなく優しいお客さんだった。
携帯を
届けに来ただけだと
すぐ帰ろうとするその人を
引き留めた。
他のお客さんに
今日は来て欲しくなかったからだ。
身体を求めるつもりはないと、
全力で出すこの人なら、
一緒にいても安心だと思った。
だけど、
首を絞められている感じが
抜けなくて、
優しすぎるその人を
目の前にしても
恐怖が抜けなかった。
怖くない。
怖くない。
そう言い聞かせる。
いつも通りだ。
そうしていると、
彼はやはり首と手首についた
その跡に気がついてしまった。