エスキス アムール
第6章 甘い体験
さっきのお客さんとは違って、
彼は本気で
私のことを心配してくれた。
着替えて来い
客の命令だ
そう真剣に私に言う彼に、
なんて
優しい人なんだろうと思った。
なんて
優しい命令なんだろうと。
その人が
今日は最後までいてくれるという。
涙が出そうだった。
そこを何とか微笑んで耐え、
急いで私服に着替えに外に出た。
すると、
そこにはシュウがいて、
会話を聞いていたのか、
「優しい人で良かったね。
オーノさん、いー奴だ」
そう言って、
私の肩をポンと叩いて下の階へ降りて行く。
頷いて
ロッカールームに行き、
私服に着替えて部屋に戻ると、
大野さんは、
難しい顔をしてグラスに何かを注いでいた。