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エスキス アムール

第48章 ただいまとおかえり









「木更津…」


いっぱい言いたいことはあるけど、兎に角今はキスがしたかった。
すりつけていた頭を上げ、木更津に唇を近づける。



「お風呂、入っておいで」




けれど、それはすんなりと躱されて、なんでと思いながら見つめると、そんなことを言われて木更津は笑った。


俺の荷物を持つと、部屋の中に入っていく。
拒否されなかったということは、もうこの家にいていいということなのだろうが、こんなにあっさりとした再会で正直物足りない。


俺は今にでもキスしたくてたまらないのに、木更津は至って冷静だ。
おまけにお風呂入っておいでなんて。



彼の態度に納得がいかなかったけど、その場にとどまっても仕方がないので、部屋に入った。


久しぶりに帰ってきた部屋は、何ひとつ変わらない。




「どうしたの、波留くん」



ドキドキしながら、また荷物を整理している木更津に抱きつく。
木更津は盛っている俺とは違って、困ったように笑いながら身体に回した俺の腕をゆっくりと剥ぎ取る。




「…っなんで…っ!」



その態度にとうとう泣きそうになって、子供みたいに駄々をこねると、木更津はもう一度、


「お風呂に行っておいで」


ゆっくり言って、あやすようにポンポンと叩いた。






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