エスキス アムール
第48章 ただいまとおかえり
風呂から出て、リビングに向かうともう真っ暗で。
泣きそうになりながらも寝室に向かうと、木更津はベッドに横になっていた。
「…木更津…?」
「ああ、波留くん。…おいで」
もしかしたら一緒に寝るなとか言われるかもしれないと思って、様子を伺っていると、木更津はそう言ってタオルケットをはいでくれた。
少し、眠っていたみたいだ。
仕事が忙しくて疲れているのかもしれない。
横に潜り込むと、木更津の香りがして、ホッと落ち着く。
寄り添って彼の肩口に頭を擦り付ける。
そうすると、木更津の手が頭を撫でてきて、それが心地よくて目を瞑る。
「木更津…寂しかった…?」
そう聞くと、彼が笑う気配がして、目を開けると微笑んだまま俺の頭を撫でていた。
「…気が気じゃなかった。」
「…え…?」
「だって波留くん、キスしたでしょ?
どこまでしたの?それ以上のことした?」
キスはした。
それ以上と言われれば、したかと言われたらしてないけど、彼女の身体に触れたことは確かだ。
目を泳がせて黙り込むと、ほらねと、木更津はため息をつく。
「だって…木更津が時計、外したと思ったから…」
木更津はその一言を聞いてもピンとこなかったのか、暫くの間ぽかんとしていた。
そして、ようやく意味がわかったのか、
「僕に捨てられたと思ったんだね」
そういいながら、優しく優しく、俺の頬を撫でた。